ファイテン株式会社 業務部受注管理部門データエントリー 岩崎真美氏

事業内容 
医薬部外品・医療機器・化粧品,ヘアケア商品の製造・販売,スポーツ関連商品・健康食品・健康グッズ等の製造・販売

従業員数  
全体689名
(そのうち伏見物流センターは35名
うち障害者 1名(精神障害)

採用のきっかけを教えてください 
障害者雇用率の達成のため,採用をすることになりました。他の事業所では外勤が多かったため,内勤業務が比較的多い当事業所で採用することが決まりました。

ハローワークに求人を出し,何人かの方に応募いただきました。障害の種別についてはこだわらず,面接の印象で採用を検討しました。Hさんは面接の時の受け答えが大変明るく,前向きな印象を受けました。この方なら一緒に働けるのではないかと考え,採用しました。

障害者雇用は初めてでした。障害のある方というと身体障害のある方のイメージが強かったため,Hさんと面接する中で,「この方は何の障害があるというのだろう?」と思うほど,ごく普通の女性としか思えませんでした。私たちに障害者雇用の知識がなかったことが良かったのか,精神障害のある方の採用をとまどわれる企業が多いと後で聞きましたが,採用の際は何も不安はなかったです。

仕事を教える上で配慮が必要だったことは,どのようなことでしたか?
彼女は大変がんばりやさんで,なかなか弱音をはきません。初めはそれが掴めずに,仕事を依頼するとちゃんとこなしてくれましたので,あれもこれもと普通の方と同じように仕事を頼むようになってしまいました。ある時ぐったりと机に伏した彼女を見て初めて(疲れているのでは?)と気づいたのです。その時に初めて彼女が自分の気持ちを伝えることが難しいことが解ったのです。
その後は「しんどかったら言ってね」と伝えて様子をみました。以前よりは言えるようになりましたが,仕事のミスをした時などにこちらから声をかけ,どうしてミスをしたのかなということを話し合っています。仕事が難しい場合はその業務をはずすこともありましたし,集中してしないといけない業務の後は自主的に10分の休憩を入れるようにルールを作りました。そうすることで疲労感も軽減し,生産性も維持できています。
周りの社員も彼女の様子をさりげなく見ていてくれて,「最近ちょっとしんどそうですよ」と教えてくれます。ただ,この辺りは普通の部下への配慮と変わりません。
また,最初は午前中の勤務で,次第に一時間ずつ時間を増やす方法をとりました。
最終的にフルタイムで働いてもらえたらと思っていますが,一度フルタイムを試した時に,やはりしんどかったようでしたので,現在は16:00までの勤務で一旦様子を見ています。
このように,少しの工夫は必要ですが,それほど特別な配慮をしているという意識はありません。

教えるのに担当者を作りましたか?
同じ業務を担当している私が自然にキーパーソンとなっています。ただ,他の社員も一緒に仕事をしているため,細かな指導は複数で行っています。
仕事の組み方などは私がしていますが,気持ちを聞くなどの精神的なフォローは他の社員も自然にしてくれています。

採用の際に利用した機関はありますか?
就職される時には,職業相談室との関わりがありましたが,最近は全くこられません。
彼女自身が他の支援機関とのつながりがあまりなかったからかもしれませんが,1年に1度でも支援機関が定期的に訪問していただき,企業とご本人双方の話を聞いていただけると有り難いです。
彼女自身が直接会社に話しにくいこともあると思うので,どこかの支援機関がクッションになってもらえると企業側としても安心ですね。

活用した制度はありますか?
当時ジョブコーチもトライアルも制度自体をよく知りませんでした。トライアル雇用制度があるのですね。それは企業にとっても大変有効な制度だと思います。

採用してから 会議などはしましたか?
特に会議はしていません。問題がなかったからかもしれません。

支援者に何かご要望がありましたらどうぞ
初めて障害のある方を会社で雇用するという場合,障害のある方と接したことがない社員が殆どですし,私自身「わからない,不安」という気持ちが大変強かったのを覚えています。
実は最初の採用では,精神障害のある方を2名を採用しました。私たちは応援する気持ちで「一緒に頑張っていこうね」とご本人を度々励ましていましたが,ご本人にとってはそれが大変なプレッシャーになっていたようで,残念ながら体調を崩されて本採用に至りませんでした。
あの時もう少し私自身が精神障害のある方に対しての理解があれば・・・と思うと,今も心残りです。初めて障害者雇用に取り組む会社に対しては,雇用側の社員に対して障害のある方の障害の説明や配慮すべき事項などを教えていただけるような『勉強会』のようなものを開催していただけるといいなと思います。

雇用をためらっている企業に一言
初めて障害のある方を指導してから4年になります。今までで感じたことは,「障害のある方」という観点でその方を見るのではなく,「一人の人として」その方を見て,その人なりの成長力を伸ばしていくことを考えていけば良いのだということです。障害のある方が企業の戦力になれるかなんて,面接だけではわかりません。やはり雇用して一緒に働いてみないとわからないのです。会社によって求められる
人材も違うでしょうし,相性もあるでしょう。双方が様子を見ないことには,進まないのだと思います。
そのために大変有効な「トライアル雇用」という制度があるので,障害者雇用をためらっておられるならばそれを活用し,「まずは採用してみる」ことをおすすめします。

その他障害者の雇用で感じるところ
私が一番驚いたことは,とにかく彼女は「休まない」のです。真面目なんですね。風邪などで休む事はもちろんありますが,用事で年休を取る以外は毎日遅刻もせずに出勤されます。毎日ちゃんと来てくれることで,私は彼女をあてにして仕事を任せることができています。

彼女のような方なら,もう一人採用して欲しいくらいです。それくらいに,彼女の働きぶりには感心していますし,これからも続けて働いて欲しいと願っています。