就労移行支援事業所スキルアップスマイル管理者 新宮尚樹さん

Q1. 現在所属されている施設(事業所あるいは支援機関)では、どのような役割・業務を担っておられますか。

就労移行支援事業所スキルアップスマイルで2017年の立ち上げから管理者を努めています。事業所の運営全般に関わる業務を担当していて、大きく分けて2つの役割があります。1つは、利用者の方々が安心して就職活動に向けた準備が出来る環境を整えることです。もう1つは、スタッフが働きやすい環境を整えることです。

Q2. 障害のある方の適性や希望に沿った就職ができるために、どのような取組等をされていますか。

担当制による支援を実施していることが大きな特徴です。利用開始から就職後の定着まで、一貫して担当の支援員がサポートを行います。お一人おひとりの目標、希望、悩みなどは異なり、また、時期によっても変化します。そのため、担当制によって密なコミュニケーションを図り、状況に合わせたなサポートを心掛けています。ハローワーク、支援機関や医療機関などとの連携も行い、利用者の希望に沿った就労をサポートしています。

就職活動に向けたサポートは、担当支援員が中心となり、他の支援員も一緒になってサポートをしています。採用経験者や事務職経験者といった、専門性を持ったスタッフが、それぞれの得意を活かしたサポートを実施していることも特徴だと考えています。

利用開始から定着まで一貫して関わることで、些細な変化にも気づきやすいというメリットがあります。微妙な言葉遣いや表情の変化から、その日の状況を知ることもあります。継続的な関わりが、長期定着にも繋がっていると考えています。

Q3. 一般就労を目指す障害のある方(あるいは支援対象者の就職をサポートしている支援員の方)に向けてエールを一言!

就職活動は、孤独で大変な道のりだと感じています。何をしたいのか、何に向いているのか、面接や履歴書作成など、一つ一つに悩み、時間がかかり、結果が出ないこともしばしばあります。そんな大変なことだからこそ、私たち就労移行支援事業所がサポートをさせていただきたいと考えています。京都には多くの就労移行支援事業所があります。ご自身にあった事業所を見つけて、ご希望を叶えるようなサポートをしたいと考えていますので、ぜひ、お気軽に相談ください。

支援に関わる皆さま、いつも大変お世話になっています。繋いで頂いたバトンを、就職活動・長期定着というカタチで連携させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

Q4. スキルアップスマイルのホームページには取組等が掲載されていて興味深く拝見しました。あらためて、スキルアップスマイルの強みや特徴等を教えてください。

当事業所の強みと特徴は、大きく分けて以下の3点です。

1. 地元京都の企業へ就職される方が多い
当事業所は、株式会社エスユーエス(京都発祥のIT・機電計・VR/AR開発など、25年以上の歴史を持つ)の特例子会社である株式会社ストーンフリーが運営しています。株式会社エスユーエスは、地元京都のみなさまに支えられて、ようやく恩返しができる規模になった時期に、特例子会社の立ち上げや就労移行支援事業をスタートさせました。障害者雇用・就労に関する課題解決に少しでもお役に立てば大変うれしい限りです。「京都で働きたい」というご利用者さんも多くおられ、その希望を実現できるように日々支援に取組んでいます。

2.就職後の長期定着を意識したサポート:
利用者の方々が「本当に入りたい」企業へ就職できるように、を意識しています。直近1年間(2023年4月~2024年3月)で22名の方が就職・定着されましたが、ご利用者さん、スタッフと企業様や支援機関のみなさんの連携があってのことと考えています。

3. 親会社での実習や、長期就労に繋がる実践的なトレーニング
親会社の株式会社エスユーエスと同じフロアにあり、毎月の実習を実施したり、毎年2-3名の方がエスユーエスに入社されています。

また、永く働き続ける土台作りにチカラを入れています。実際に働いたことを想定した自己理解・体調管理を最も大切にしています。また、事務職で就職される方が多いこともあり、パソコンスキルについては高度なスキルはあえてせず、「指示された内容を、正確に、納期内に実行できるPCスキルの習得」を目指しています。分からないところをスタッフに聞いたり、自分のペースで学習できる環境を用意しています。

Q5. (Q4の回答の内容を踏まえて)その特徴や強みを達成する中で、新宮さんが工夫されたことや苦労されたことがあれば教えてください。

私自身というよりも、メンバーやスタッフの努力によるところが大きいと考えています。利用者の皆さんが「来て良かった」「就職に繋がる」「永く働き続けられる」と感じてもらえるよう、様々なトレーニングを提供できるように日々取り組んでいます。その時の利用者の状況や企業のニーズに合わせて、変化をさせています。

特に座学ではなく、ロールプレイングなどを含む実践的なトレーニングに力を入れています。ビジネスマナー、コミュニケーション、アサーションなど、働く土台作りに繋がるトレーニングは、実践形式で取り組んでいます。ビジネスフォンを使った電話練習もしています。パソコントレーニングでは、会社で実際に求められるスキル、指示された内容を期限内に正確にこなす能力を養うことに重点を置いています。ExcelのマクロやVBAといった高度なスキルは、就職後すぐに必要とされる場面は少ないため、基本的な操作に習熟し、実務で役立つ能力を身につけることを重視しています。

また、「障害理解」では、自身の障害特性を理解するだけでなく、一緒に働く他の障害の方についても知る機会を設けています。

希望者向けにイラストレーターなどのデザインソフトのトレーニングも行っています。デザイナー育成ではなく、写真やテキストの変更や、officeソフトで作成したチラシのリメイクができるスキルぐらいのスキル習得を目指しています。事務職経験・未経験の方を問わず、社内での活躍の場が増え、仕事を任されることにより、自信に繋がり、長期的な就労に繋がっています。

Q6. 一般就労に向けて日々頑張られる障害のある方を支える職員の立場として、新宮さんが特に心掛けておられることがありましたら教えてください。

利用者の方々の「動きたい」というお気持ちが出発点であり、その実現に向けて、サポートをさせていただくのが役割だと考えています。

利用者の頑張りをしっかりと見守り、小さな変化や成長を見逃さないように心がけています。平均利用期間は1年弱の期間を通して、変化を捉え、感じ取ることを意識しています。

何よりも大切だと感じているのは、私たち支援員自身が常に健康で元気であることです。いつでもどんな時でも、利用者のみなさんをサポートできる体制の土台だと考えています。仕事中は真剣に、休憩時間にはリラックスして過ごすなど、メリハリをつけることも大切だと考えています。