日本カルミック株式会社 中山幸太郎さん 男性 38歳

写真:中山さん

勤務年数 8年6ケ月(H.15から)
障害の種類 高次脳機能障害
仕事の内容 営業
勤務時間 (休憩1時間)
勤務日数 月-金 5日/週
賃金 正社員
通勤方法 電車

インタビュー

僕は、一昨年の12月、通勤中に車にはねられ6日間意識不明になりました。
幸い、体に大きな怪我はなく2週間後に退院となり、退院後まもなく職場へ復帰しました。
復帰後、最初に感じたのは体の違和感で、めまいやふらつき、今までになかったような疲労感、眠気に襲われ、何度か病院を受診しました。そこでは、日にちがたてばそのうち治ると言われていましたが、気になった僕は、職場復帰から4ヵ月後、京都府立医大病院を受診しました。

そこで、色々な検査を受け、告げられたのが「高次脳機能障害」という聞いたことがない病名でした。
僕は、左側頭葉の損傷と、びまん性軸索損傷といって、脳全体に衝撃が加わった際に、脳が激しく動き、細かい神経が広い範囲で損傷した痕があり、そのために色々な症状が残る、と言われました。
高次脳機能障害は、見た目には変わりないけれど、記憶障害・注意力の障害・物事を効率よくすすめることの障害などが出現するそうです。また、感情がコントロールできずに、些細なことでキレてしまったり、幼稚っぽくなるなど、性格が変わってしまうこともあるそうです。
病院で説明を聞いたり、リハビリを受けるうちに、職場復帰後なんとなく感じていたやりづらさが高次脳機能障害によるものだとわかってきました。
例えば、立て続けに電話がかかってきて、メモをとる余裕がないと用件を忘れてしまったり、騒がしいオフィスで電話にでると、周りの声が気になって集中できず、用件を理解できないということが多々あります。
自分が顧客に自社製品を説明しているときも同様で、周りが騒がしいとそちらに気をとられ、今自分が何を話していたかわからなくなったりしました。また、以前では考えられなかったような書類の小さなミスが増えました。
以前と同じ時間働いていても、事故以前とは比べ物にならない位疲れるため、休日は1日中眠っていて、動くことができないこともあります。
仕事のスピードも遅くなり、残業時間が長くなり、さらに疲労がたまるといった悪循環に陥っていました。30代半ば、まだまだこれからという時に突然にして思いもよらなかった障害を抱えることになり、不安と自分への苛立ちから、不眠や気分の落ち込みといった症状も現れるようになりました。
上司は何と言うだろうか・・・そんな不安でいっぱいでしたが、意外にも何も言わずに受け入れてくれました。部署の異動を恐れていましたが、得意の営業を続けさせていただけることになりました。
事故から1年10ヶ月たった今でも、リハビリのため2週間に1回会社を休んで通院する必要がありますが、多忙な中、許可してくださっています。また、重要な書類はチェックしてくださったり、僕に何かを伝えるときは、必ずメモやメールなど、残る形で伝えてくれています。
上司は、情緒面でも僕の支えになってくれており、たびたび食事へ誘ってくださり、話を聞いてくれます。
僕は事故に遭って、今まで以上に働くことの喜びを感じるようになりました。営業という職は、結果が数字で返ってくるため、とてもやりがいがあります。続けさせてくれている僕の会社にとても感謝しています。
僕は幸い、復帰することができましたが、高次脳機能障害は、外見のわかりづらさから理解を得にくく、就労できずにいる方が大勢いるそうです。しかし、高次脳機能障害はメモや手順書の活用や、周囲のサポートがあれば、残っている能力が活かせるはずです。
僕の経験を通して、少しでもこの障害への理解が広がってほしいと思います。

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